「本来、統合している」という視点

2023.05.20 Handa, Aichi

ロルフィングの“ゴール”は「統合」 しかし・・・

重力の下での「統合」。これがロルフィングの大きなゴール(目標)だと、一般的に説明されます。

統合とはどういうことか。
ここはできるだけシンプルに、「全てがフィットして、響き合っていること」としておきます。
(この問いについては、別途投稿します。ロルファー自身も探求しながら変容していくので、言い尽くせないものではありますが、、。)

さて。
「ゴール」という言葉には、最後に辿り着くものというイメージがないでしょうか。
辿り着くまでは存在せず、最終的に体験できたり、現れたりするもの。

10シリーズのプロセスを経て、最後に統合に至る。

実際そう感じられることも多いと思いますし、その見方も”正しい”です。

しかし最近、少なくとも自分がセッションを提供する上では、その見方だけでは不十分じゃないかと思うようになりました。

イールドの文脈で観察されること

すでに何度か書いているように、こちらでは、イールドの技法(the Art of Yield)を組み込んでロルフィングを提供しています。

ベーシックトレーニングで習得するロルフィングではクライアントがテーブル(ベッド)に横たわった後、すぐにタッチが始まります。
各回のテーマに沿いながらクライアントの状態に合わせてワーク(タッチ)が進み、最後に、その日のワークを総合しセッションを終えるための手技。ここで身体全体のまとまりや調和を確認します。

一方、イールドの技法を組み込む場合、ロルファーとクライアント双方にちょうど良い立ち位置や間合いを探すことから始まります。
うまく間合いが見つかると、クライアントの身体が支えに対してイールド(沈む、委ねる)し始め、ロルファーはその反応を適宜サポートします。すると、しっかり委ねて深く休息できる状態や、全身に呼吸が伝わるような動きが現れてくることが多いです。そしてこの、全身に響きが広がる状態から、各回のテーマに沿ったワークへとさらにセッションが進みます。

つまり、セッションの比較的早い段階で全体の繋がりや響きの広がりが観察されるのですが、ベーシックなロルフィングではセッションの終盤に観察されることが多い。

セッションの早い段階で「統合」に通じる状態が現れるのはどうしてだろう。
単に「現れる順序が違うだけ」ではなさそうだ、と長く興味を持っていました。

テクニック以前のもの

そこであるとき、テクニックよりも前にある、身体を見る視点に理解のヒントがあるかもしれない、と思い至りました。

というのは、身体が「本来統合している」もしくは「自ら統合しようとしている」とすると、セッションの早い段階で統合に通じる身体の質感が立ち上がることも納得できると、気づいたからです。

これは、「様々なワークの結果として、身体全体のまとまりが引き出される」という前提や期待を、僕自身が暗黙のうちに持っていたことに気付いた瞬間でもあります。

おそらく、「ゴール」とは最後に辿り着くものというイメージや、ベーシックトレーニングで得た知識や体験から思い込んでいたのでしょう。

「身体や場のIntegrityを信頼する」という田畑さんの言葉や、「身体は本来整っている、整おうとしている」という小関さんの言葉にも共感し納得していましたし、その他にも同様の視点を伝えてくれる言葉は耳にしていました。また身体的な感覚としては、すでに納得していたことでもあります。
しかし、「ゴール(=最後に辿り着くもの)は統合」、裏を返すと「”未統合”からスタートしている」という思考的、認知的な前提自体には無自覚だったように思います。

前提が変わると見えるものが変わる

「未統合→統合」という視点や理解が間違っているわけではありません。

その理解と、「本来、統合している」という視点は同時に持ち得る、というのが今回気づいたことです。

すると、ロルフィング10シリーズ全体の捉え方も「未統合→統合」という直線的な軸に加えて、すでにある「統合している身体」に気づき、体験し、体現していくプロセスとしても理解できるようになります。

この視点はクライアントのIntegrityを尊重することに自然と繋がりますし、イールドの技法で用いる様々な触れ方の理解も深まります。

ベーシックトレーニングで習うロルフィングには技術的な「型」のような側面があるのですが、イールドの技法は相当に自由度が高く、「型」らしい感じがありません。
型がないことは、クライアントの身体が「本来、統合している」という視点があればこそのものだと、今は理解しています。

どちらのアプローチも構造的な変化につながるので優劣をつけるものではありません(し、僕が教わった先生方も両方の視点を持っていたと思います)が、僕自身がクライアントとしてもロルファーとしてもイールドの技法に惹きつけられてきた理由が一つ言語化できたような気がします。


この記事内にも登場する田畑さん、小関さんによる講座を、名古屋で開催します。
普段は東京や山形にいらっしゃる先生方に直接学べる機会です。ご興味のある方は以下からご覧ください。