コンラッド・オバーマイヤー(Konrad Obermeier、通称Conny)先生による、ブレッヒシュミット胎生学のオンラインクラスを3ヶ月に渡り受講しました。
ロルフィングのトレーニングで最初に解剖学を教えてくれたのがConny。
いつか彼にバイオダイナミックな胎生学をしっかり習いたいと思っていたので、待望のクラスでした。
胎生学というのは、精子と卵子が受精したのち出産に至るまで、どのように発達・成長していくのか探求する学問。
ロルフィング®︎やYielding Embodiment®︎のセッションに大きな影響を持つ観点として、どうやって私たちの身体という”形態”(かたち)ができてくるのか、という問いがあります。
僕たちは受精の瞬間から連綿と続くプロセスの一部を生きているとも言えるわけで、初期の発生過程でどのようにかたちが出来上がってくるのかを学ぶことは、いま僕たちが生きているこの身体の成り立ちや、今後の展開・ポテンシャルに対し新たな視座や広大な視野を与えてくれます。
どうやってできてくるのかを訊ねることは、自分自身や、目の前のクライアントの身体の構造(かたち)がどうやってできているのか、そして今後どう変わる可能性があるのかという視野を開いてくれる。
ロルフィングやイールドのセッションにおいて構造(かたち)をみる視点に、大事な示唆があります。
その問いは、たとえば腰痛にこうワークすればいい、など個別のテクニックに必ずしもつながるものではありません。
個別のテクニックは、そうした”開けた地平”とともにクライアントと出会う中で、自ずと生まれてくる。
講座の締めくくりに、Connyもそう語っていました。
遺伝子が我々の形質を決めているという見方(ジェネティックGenticな発想)がある一方で、”かたち”は相対的な位置関係、代謝の勾配、環境によって生まれるという見方(バイオダイナミックBiodinamicな発想)があります。
後者の見方を、胚子(胎児)の観察を忍耐強く重ね、形態学の観点から提唱したのがブレッヒシュミット(Erich Blechschmidt)博士。
Connyはヨーロッパのロルフィング協会におけるライフサイエンス・解剖学の先生であり、ブレッヒシュミットの唱えた学説を整理・研究しプラクティショナーに広く伝えています。
今回学んだことの一端は、
- 代謝の勾配がどのように発生の過程に関係を持つのか
- 初期胚子内の細胞・液胞などの位置付けと形成
- 発達における制限とテンションの関係性
- 横隔膜や肺の形成と成長後の構造・機能へのつながり
- 流動性が心臓の形成につながるまで
- 脳の発達を支える心臓
- 神経血管束の発達上、形態上の重要性
- 脳や顔の形成にはどのような力学が背景にあるのか
- 体幹部から手が発生してくる流れ、など
(高校時代、生物の授業が好きだったことも関係あるのか、こうした話題も好物で。なんのこっちゃ···という方はスルーしてください^_^)
個別のトピックはいくつもありますが、発生の過程で繰り返し観察されるはたらき、仕組みに触れることができました。
端的にいうと、Least Resistance(最小抵抗)の経路を辿って発達していく、ということです。
Connyにはじめて教わったのはPhase1よりも前のプレトレーニング(Spectrum)にて。
彼のクラスでは解剖学をLiving Anatomyと呼んでいて、個別の筋肉や骨などの構造よりも先に、生命の成り立ちに向き合う視座としてこれを伝えてくれていたのでした。
いわゆる解剖学と比べて、生命が動きや流れから形作られるプロセスが感じられるのは、とても意味深い。
トレーニング最初期からの疑問、関心をようやく消化することができた。Living Anatomyとして彼が教えてくれていたことを噛み締める良い機会でした。解剖学の学びも、終わりのないプロセスです。
通訳は、クロニックスチューデンツの幸田さん。Connyと幸田さんによるクラスというくらい、通訳の幸田さんを通して渡される情報にも質感がありました。
イールドワーク、Yielding Embodiment®︎とも密接に関わる生命の発生の仕組み。
今回の講座で触れて改めて感動したことがあったので、稿を改めて書いてみたいと思います。