構造に働きかける理由

Tensegrity Model (September 2022)

問題ではなく構造に働きかける

問題への対処が一時しのぎにしかならず、不調や動きの制限が繰り返し起こる。
そんな時は”構造”に注目することで根本的な変化につながる可能性があります。

身体は、パーツの寄せ集めではありません。
各器官がそれぞれの役割を果たすだけでなく、全体として協調してはたらくことにより、パーツの単なる集合よりも遥かに発展的な機能を、全体として(=一つの構造として)生み出しています。

構造を形作る”筋膜”

その構造の中で、”関係性”を決める重要な組織の一つが、筋膜です。

筋膜は、筋肉だけでなく、骨や血管、神経や脳に至る全ての器官を包んでいて、各器官が動く(=はたらく)ための場、空間を作っています。

また同時に、包み込んだ器官同士をつなぐ役割も持っています。
(筋膜は、結合組織とも、細胞外マトリクスとも呼ばれます。)

「仕切ると同時につなぐ」筋膜のおかげで、身体の中の各器官が独立しながらも協調して動くことができます。

ところが、日々の習慣や怪我、事故などにより、筋膜はその柔軟性を失うことがあります。すると、その筋膜に包まれている空間自体も弾力を失うため、その組織の動きが制限されます。さらに、周りの組織もそれを補うため、影響は周りにも広がっていきます。

柔軟性を失った筋膜による動きの制限。さらにそこから生まれる動きを繰り返すことで、脳もその動きを学習してパターンが作られていきます。

こうして無意識のうちに、新たな構造(空間的な関係性)が身体に定着していきます。

構造を支える筋膜の変化が姿勢や動きの癖を作り、繰り返す不調や制限に繋がるのはこうした仕組みがあります。

構造を整え、バイタリティのある身体へ

筋膜は、一般的なマッサージのようにただ力を加えれば反応するわけではありません。

部分的なストレッチや施術が一時的な効果に留まったり、健康に良いはずの運動でケガや痛みを繰り返してしまう背景には、それらが筋膜の変化に繋がらず、不調を引き起こし続けている構造が変化していない、ということが考えられます。

ロルフィングは、筋膜に働きかけることで、重力と調和した全身のバランスを探求することを、50年以上続けてきた技法です。

筋膜が本来の弾力やみずみずしさを取り戻すことで機能が発揮され、各組織が動くための”スペース”が生まれる。組織の間にちょうどよい関係性ができる。

すると、身体はより自然なバランスに向かっていきます。結果として、外から見た姿勢も重力と調和していく。

副次的に、動きやすさを感じたり、循環が良くなったり、休めば回復できるようなレジリエンスのある身体に向かっていきます。

構造が健全なバランスにシフトすることで、結果的に不調の改善を実感することにつながるのはそうした理由からです。

ロルフィングは、一人ずつが気づきを重ねていくプロセスでもあります。

ロルファーとの共同作業により、制限がとれて自然なバランスを発見し、取り戻していくという構造の変化には、もともとあった(のに忘れられていた)ポテンシャルに気づいていく喜びも伴うことが多くあります。